奈良の伝統工芸品として、まず挙げられるのが奈良筆ではないでしょうか。
奈良筆の発祥には、その昔、政治の中心地が奈良にあったことと深い関係があります。
南都七大寺では、当時の最先端の学問でもあった仏教を学ぶために各地の頭脳が集まりました。そこで活躍したのが筆です。
奈良では中国からもたらされた様々な書物が書き写されました。写経を行っていたのは各寺の僧のみにとどまらず、1,000名を超える写経生たちが、政府が設ける写経所で膨大な量の写経を行っていたと云われています。
奈良筆は写経によって広まっていったんですね。
中国から筆の製法を持ち帰った空海
写経が盛んに行われていたため、筆・墨・紙の需要はかなりのものでした。
当時の中務(なかつかさ)省図書寮内には、専門の造筆手・造墨手・造紙手が置かれていたという記録が残されています。
都のあった平城京でも、戸籍謄本や課税台帳をはじめとする様々な書類が往来していました。
奈良筆の発達の陰には、こうした背景があったんですね。
奈良筆の由来を辿っていくと、有名な僧「空海」に行き着きます。
空海が中国から筆の製法を持ち帰り、奈良で製造されるようになったのが始まりです。毛質に応じて配分や寸法が決められ、巧みに混ぜ合わされます。毛組みに時間を掛けるこの技法は「練り混ぜ法」と呼ばれ、穂先の仕上がりに絶妙の味が出ます。
奈良筆は奈良墨と共に、奈良を代表する伝統工芸品として親しまれています。
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